日本で賃貸契約を結ぶ前に:必ず確認したい15項目
契約の種類、家賃、更新料、短期解約違約金、同居人、ペット、退去時の費用まで。賃貸借契約書に署名する前に読んでおきたい15項目のチェックリストです。
「審査に通りました」と連絡をもらうと、うれしくなってその場で署名してしまう方は少なくありません。しかし審査の通過は、契約に進む条件が整ったという意味にすぎません。署名したその瞬間から、家賃・期間・更新・中途解約・同居人・ペット・退去に関する条項が、ご自身を拘束しはじめます。
大切な原則は、理解していない書類には署名しないことです。 国土交通省のガイドブックも、借主が契約書を読み、説明を受け、内容を理解したうえで署名することを勧めています。署名は、その内容を承諾し、守ることに同意したという意思表示です。部屋探しのガイドブック
1. 契約の種類を確認する
まず、その契約がどちらなのかを確認してください。
普通賃貸借契約:一般的な賃貸借契約です。
定期賃貸借契約または定期建物賃貸借契約:期間が定められた契約です。
「2年」という数字だけを見て判断しないでください。普通借家契約と定期借家契約では、終わり方も、更新や再契約の仕組みも違います。定期借家契約の場合、法律と契約の条件に従って期間の満了とともに賃貸借関係が終了し、住み続けるには改めて合意が必要になることがあります。
書面で確認しておきたいことは次のとおりです。
期間が満了したら自動的に継続しますか。
それは更新ですか、それとも新しい契約の締結ですか。
住み続けるための費用はかかりますか。
終了の通知はいつ届きますか。
普通借家契約と定期借家契約は何が違うのか
ここは最も誤解の多いところです。どちらの契約書にも、同じように「期間2年」と書かれていることがあるからです。
普通借家契約:住み続けるのが原則
普通借家契約では、期間が満了しても契約は続きます。国土交通省のガイドブックは、契約が自動的に更新され、正当な事由がなければ貸主は更新を拒めないと説明しています。つまり、住み続けることが原則であり、終了させるほうが事由を必要とする例外にあたります。
定期借家契約:期間満了できっぱり終わる
定期借家契約では、期間の満了とともに賃貸借関係がはっきり終了し、更新はありません。双方が合意すれば再契約という形で新たに契約を結ぶことはできます。違いは呼び方だけではありません。更新は借主の権利であるのに対し、再契約は貸主の同意しだいであり、再契約時の家賃条件が最初と変わることもあります。部屋探しのガイドブック
定期借家契約には、普通借家契約にはない書類が二つ付きます。更新のない契約であることを確認する契約前の事前説明書と、期間満了前に貸主から届く終了通知書です。この二つを渡されたなら、定期借家契約を結ぼうとしている明確なサインです。標準賃貸借契約書等 — 国土交通省
ですから、どれくらい住むつもりなのかを先に考えておいてください。条件のよい定期借家物件でも、残りの期間が1年しかなければ、予定より早く引っ越し、初期費用を最初から払い直すことになりかねません。
2. 契約者名と同居人全員
在留カードと住民票の記載に合わせて、名前のつづりを確認してください。配偶者、子ども、ルームシェアの相手が同じ部屋に住むのであれば、求めに応じて申告する必要があります。
勝手に住む人を入れ替えたり、友人を長期間泊めたり、他人に又貸ししたりしないでください。契約書には通常、譲渡・転貸・入居者の変更に関する定めが置かれています。
3. 住所・部屋番号・面積
当たり前に思えますが、部屋番号や棟を間違えると、住所の登録、荷物の受け取り、保険、その後の各種手続きに影響します。
次の書類の記載を突き合わせてください。
賃貸借契約書。
重要事項説明書。
見積書。
間取り図。
鍵の引き渡しに関する案内。
住所の書き方が書類ごとに違う場合は、住民票の手続きや在留カードの記載変更でどの表記を使うのが正式なのかを確認しておきましょう。
4. 家賃の発生日と鍵の引き渡し日
契約日、賃貸借の開始日、鍵の引き渡し日、引っ越しの日は、それぞれ違うことがあります。次の点を把握しておいてください。
家賃はいつから発生しますか。
初月は日割り計算になりますか。
翌月分を前払いしますか。
いつから部屋に入れますか。
鍵をまだ受け取っていないのに契約が始まっている場合、その分の費用は誰が負担しますか。
最初の一泊をした日から家賃が発生する、と勝手に思い込まないでください。
5. 家賃・管理費と支払い方法
次の項目は、それぞれ分けて確認します。
基本の家賃。
管理費または共益費。
毎月の保証料。
振込手数料または口座振替の手数料。
駐車場、駐輪場、トランクルームの料金。
加入が必須のインターネット回線があればその費用。
毎月の支払日と、残高不足だったときの扱いも控えておきましょう。督促が来てから支払い直しの方法を尋ねるようでは遅すぎます。
6. 初期費用の全項目
初期費用の見積書と契約書を突き合わせてください。
敷金。
礼金。
仲介手数料。
保証会社の費用。
保険料。
鍵交換費用。
前払いの家賃。
クリーニング費用やその他のサービス費用。
どれが返還される費用で、どれが返らない費用か、返還の条件は何かを聞いておきましょう。理由と受取人を確認できないまま、別の口座に追加の送金をしないでください。
7. 更新料と更新時の費用
普通借家契約では、更新料のほか、更新事務手数料、保証会社の更新料、保険の更新料が定められていることがあります。
家賃の更新料だけを聞いて終わりにしないでください。同じ時期にまとめて発生しうる費用を、すべて足し合わせて考えます。
賃貸借契約の更新料。
管理会社の事務手数料。
次の期間分の保証料。
保険の更新料。
8. 短期解約違約金の条項
物件によっては短期解約違約金が設定されています。たとえば、入居から6か月以内、あるいは1年以内に退去した場合に違約金が発生する、という定め方です。具体的な金額は契約書で確認する必要があります。すべての物件に共通する相場のような数字はありません。
転勤の可能性がある方、ご家族の状況が変わりそうな方にとっては、とくに重要な条項です。初期費用が安くても、短期解約違約金が高い物件がご自身に合っているとはかぎりません。
9. 解約予告期間
退去する場合、どれくらい前に、どのような方法で通知しなければならないかを確認します。
1か月前ですか、2か月前ですか、それとも別の期間ですか。
通知はアプリ、専用書式、メール、郵便のどれで出しますか。
起算日は通知が届いた日ですか、発送した日ですか。
いったん出した通知は撤回できますか。
担当者や貸主に口頭で伝えるだけでは足りないことがあります。いつ通知を出したかの証拠を残しておいてください。
10. ペット飼育のルール
契約でペットが禁止されている場合、小型犬、猫、鳥、ケージで飼う動物なら当然に認められる、と考えないほうがよいでしょう。飼育可の物件でも、敷金の上乗せ、クリーニング費用、種類や頭数の条件が付くことがあります。
契約前、あるいは飼いはじめる前に、書面で確認してください。違反した場合、高額な原状回復費用や契約上のトラブルにつながることがあります。
11. 転貸禁止と事業利用の可否
居住用として借りた部屋は、当然に次のような使い方ができるわけではありません。
短期の民泊。
来客のある事業所。
大量の在庫を置く倉庫。
法人の登記上の住所。
契約書に記載のない人の住まい。
自宅でのリモートワークが、事業所としての利用と同じとはかぎりません。ただし、騒音や配送、来客が生じる活動であれば、やはり条項を確認しておくべきです。
12. どこまでが物件の設備か
貸主が設置した設備と、前の入居者が残していった残置物とを区別してください。エアコン、コンロ、照明などが保証の対象外の残置物である場合、修理の責任の所在が変わることがあります。
設備の一覧と、故障したときの連絡方法を確認しましょう。許可を得ないまま、自分で業者を呼んだり、大きな設備を交換したりしないでください。
13. 保険と保証会社
付随して結ぶ契約は、それぞれ期間、更新料、補償範囲を読んでおきます。保証会社が立て替えて支払っても、借主の債務が消えるわけではありません。保険もすべての事故を補償するわけではありません。
次の情報は、別にまとめて控えておきましょう。
保険の証券番号。
事故の連絡先電話番号。
保証会社の情報。
支払いが遅れたときの対応。
14. 原状回復とクリーニング費用
民法に定められたルールでは、借主は通常の使用によって生じた損耗と経年変化について、原状回復の義務を負いません。ただし、契約に特約が置かれていることがあり、具体的にどこまで負担するのかは契約書をよく読んで確認する必要があります。東京都住宅政策本部
国土交通省は、退去時のトラブルを防ぐため、入居時に部屋の状態を確認し、原状回復の条件も契約の時点で確認しておくことを勧めています。原状回復をめぐるトラブルとガイドライン
次の点をはっきりさせておきましょう。
定額のクリーニング費用はいくらですか。
入居時に払いますか、退去時に払いますか。
エアコンのクリーニング費用は別ですか。
敷引きはありますか。
どのような損傷が借主の負担になりますか。
通常損耗と経年変化は借主の負担ではありません
原状回復のガイドラインは、原状回復を、借主の故意・過失、善管注意義務違反、または通常の使用を超えるような使い方によって生じた建物価値の減少を回復させることだと定義しています。ガイドラインは、これは入居時の状態にそのまま戻すことではないと明記しています。通常の使用による損耗と経年変化を元に戻す費用は、毎月の家賃にすでに含まれていると考えられており、原則として貸主の負担とされています。原状回復をめぐるトラブルとガイドライン
実際の場面でいえば、数年住んだあとの壁紙の色あせ、日焼けによる床の変色、家具の脚による軽いへこみは、たばこの焦げ跡、換気を怠ったことによるカビ、壁に開けたネジ穴とは同じ扱いになりません。
上乗せの特約が有効になるのはどんなときか
それでも契約書には、定額クリーニング費用や壁紙の全面張り替えのように、通常の義務を超える部分まで借主に負担させる特約が置かれることがあります。国土交通省のガイドラインは、そうした特約が有効と認められるために必要な三つの要件を挙げています。
特約に客観的で合理的な理由があり、その内容が暴利的でないこと。
借主が、通常の原状回復を超える修繕義務を負うことを認識していること。
借主が、その義務を負うという意思表示をしていること。
この三要件を裏返して読むと、とても実務的なことがわかります。ある費用が別紙の片隅に薄く書かれているだけで、具体的な金額を誰からも説明されていないのなら、署名する前に説明と明記を求める根拠があるということです。署名してしまったあとで、説明を受けていないと証明するのは、はるかに難しくなります。
15. 特約はすべて読む
特約は契約書の末尾や別紙に置かれていることが多いのですが、最も重要な義務がそこに書かれていることがあります。次の項目について、一行ずつ読んでください。
クリーニング。
喫煙。
ペット。
短期解約違約金。
鍵交換。
修繕。
同居人。
インターネットなど加入が必須のサービス。
残置物や置いていった荷物の扱い。
口頭での説明が書面の内容と食い違う場合は、署名する前に、修正するか書面で確認するよう求めてください。
重要事項説明とは何か
契約の前に、宅地建物取引業者が物件と取引に関する重要な事項を説明します。ただ聞き流して終わらせる手続きではありません。
次のように進めるとよいでしょう。
読む時間がとれるよう、書類は早めに受け取る。
わからない点を書き出しておく。
理解できる言語で説明してもらうか、サポートしてくれる人に同席してもらう。
契約書と見積書に照らし合わせる。
内容が一致してから署名する。
国土交通省のガイドブックは、契約の種類、敷金と礼金、更新料、禁止事項、原状回復の条件を、署名する前に確認するよう部屋を探す人に求めています。部屋探しのガイドブック
説明の場でその場で聞いておきたいこと
国土交通省のガイドブックは、わからないことがあればその場で質問し、後回しにしないよう強調しています。説明の場は、まだ署名していない立場でいられる最後の機会です。とくに聞いておく価値があるのは次の質問です。
これは普通借家契約ですか、定期借家契約ですか。定期借家なら残りの期間はどれくらいですか。
敷金と礼金は正確にいくらで、どれが返ってくる費用ですか。
更新料はありますか。いくらで、いつ支払うことになりますか。
禁止されている行為は何ですか。模様替えや改造、入居者の追加、ペットの飼育はどうですか。
退去時の原状回復の条件は、契約書のどの条項に書かれていますか。
「それは退去のときに考えましょう」という答えが返ってきたら、今この場で書面に残すよう求めてください。部屋探しのガイドブック
14ヶ国語の対訳資料が公開されています
国土交通省は、重要事項説明書のひな形、標準賃貸借契約書、契約時に使うチェックリストを14ヶ国語で公開しています。ベトナム語版もあります。自分が読みやすい言語の版を先にダウンロードして自宅で目を通し、当日渡される日本語の書類と項目ごとに突き合わせることができます。契約の席に着く前に、どこを読み落としているのかを見つける方法としては、これがいちばん費用のかからないやり方です。14ヶ国語の資料 — 国土交通省
署名前の60秒チェックリスト
契約者、物件、同居人がすべて正しい。
契約の種類がわかっている。
家賃の発生日がわかっている。
鍵を受け取るまでに払う総額がわかっている。
毎月かかる費用がわかっている。
更新料がわかっている。
短期解約違約金がわかっている。
解約予告期間がわかっている。
ペットと同居人のルールがわかっている。
クリーニング費用と原状回復の条件がわかっている。
特約をすべて読んだ。
署名した書類の控えをすべて持っている。
NST Connectにできること
NST Connectは、見積書や契約書の主要な項目を日本語で読み解くお手伝い、管理会社に送る質問リストの作成、契約前のやりとりのサポートを行うことができます。
言語面の説明やご質問の準備をお手伝いすることは、法律相談に代わるものではありません。トラブルが生じている場合や、法的に複雑な条項がある場合は、適切な権限をもつ相談窓口や専門家をご利用ください。
NST Connect が現在掲載している物件には、それぞれ毎月の費用と最寄り駅が記載されているので、署名前に契約書と照らし合わせられます。
よくある質問
普通借家契約と定期借家契約は何が違いますか
普通借家契約は住み続けることが原則です。期間が満了しても契約は更新され、正当な事由がなければ貸主は更新を拒めません。定期借家契約は期間の満了できっぱり終わり、住み続けるには再契約が必要で、そこには双方の合意がいります。価格の話に入る前に、検討している物件がどちらの契約なのかをはっきり聞いてください。
更新料は必ず払うものですか
すべての物件で発生するわけではなく、金額も周期も契約によって異なります。年単位で繰り返し発生する費用ですから、更新の通知が届いてからではなく、見積書を見た時点で金額と何年ごとかを聞いておいてください。
契約期間の途中で解約すると費用がかかりますか
かかることがあり、物件ごとの条項しだいです。解約予告期間と、拘束期間中に退去した場合の違約金の両方を確認する必要があります。お仕事や学校の状況が変わる可能性があるなら、署名の前にこのリスクも計算に入れてください。
通常損耗の原状回復費用は払わなければなりませんか
国土交通省のガイドラインでは、通常の使用による損耗と経年変化は借主の原状回復義務には含まれません。その費用はすでに家賃に含まれていると考えられているからです。借主の負担となるのは、誤った使い方や手入れ不足によって生じた損傷の部分です。
上乗せを求める特約は必ず有効ですか
いいえ。ガイドラインは、特約が有効と認められるための三つの要件を挙げています。客観的で合理的な理由があり暴利的でないこと、借主がその内容を認識していること、そして借主がその義務を引き受けるという意思表示をしていることです。説明のないまま契約書に費用が現れているなら、署名する前に質問してください。
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出典は2026年8月27日に確認しました。実際の物件については、その契約書と別紙をご自身で必ず確認したうえでご判断ください。